目を見開いて突然の








  「申公豹、なんか赤くなってる。」


  今しがた目を覚まし、居間でのんびりと寛いでいた太上老君は、黒点虎との空の散歩から帰ってきたばかり申公豹を出迎えてそう言った。
  まだ眠そうな金色の目が、おっとりと申公豹の顔を見つめている。


  「…?」
  「顔。ほっぺとか、鼻とか。」
  「…そうですか?」


  思い当たる節が無い申公豹は、気になって頬や鼻に手の甲を押しあてた。
  椅子から立ちあがった太上老君が、長いズボンの裾を引きずってこちらに歩いてくる。


  「うん。こことか、…ここも。」


  長い袖から覗く白い指先が、申公豹の顔のパーツを滑っていく。
  肌に触れる感触がくすぐったくて、申公豹は小さく笑いながら太上老君の手首を緩く掴んだ。
  瞬間、申公豹は顔が赤くなっている理由にやっと思い当って、あ、と声をあげた。


  「焼けたんですよ、多分。」
  「焼けた?」
  「日焼けです。今日は陽射しがとても強かったものですから。」


  ねえ黒点虎、と申公豹が横を見るが、そこに黒点虎の姿はなかった。
  おや、と申公豹が首を傾げる。


  「ん、さっき寝室行っちゃったよ。疲れたんじゃない?」
  「そうですか…まぁ、日が強かったのですよ。もう初夏ですから。」
  「ふぅん…。」


  納得はしたものの、まだ赤みが気になるのか、太上老君は再び申公豹の肌をなぞる。
  鼻頭と頬の高くなっている所が、特に赤くなっていた。


  「…くすぐったいですよ、」


  首をすくめて、申公豹が笑いながら、さっきより強めに太上老君の手首に力を込める。
  ぴくりと太上老君の指先が動いて、止まった。


  「…老子?」
  

  じっとこちらを見つめたままの太上老君を、申公豹が不思議に思って見つめ返す。
  その瞬間、ふっと顔に影が下りて、気付いた時には口付けられていた。
  突然のキスに申公豹の群青の大きな瞳が見開かれた。
  驚いて固まっていると、最後の仕上げとばかりに太上老君が申公豹の下唇を舐めて、ゆっくりと唇が離れていった。
  

  「っな、にを…いきなり…!」


  かっと顔を染め上げた申公豹が声を荒げる。
  咎められた本人は、むくれた表情でバツが悪そうに横を向いてこう呟いた。






  「…君を赤くさせるのは、私だけで十分だよ。」























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  あ、甘い…自分で書いててダメージ食らいました…(笑)
  まぁいいか、10000打記念一発目!
  日焼け(というか陽射し?)に嫉妬する老子。
  


  10/6/3


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