その、ボクの額に触れる手の温度も、身体の重みも
この身体に染みついてる。
忠誠を示す手の甲へ
君と初めてあったのは雪が降り積もった寒い冬だったね。
ボクはあの時キミにとても酷いことをしたのに、キミは傷を負ったボクを最後まで見捨てないでくれたよね。
ボクは人間にも同じ虎にも優しくされたことなんてなかったから、キミの優しさがあの時はよくわからなかったけれど、
キミと過ごしたほんの数日がとても気持ちのいいものだったから、傷が治ってもキミの庵を訪ねてた。
キミはボクのことを変な虎だと思っていただろうけれど、野生の虎を匿うキミも相当変わってたとおもうよ。
あの時人間の言葉がわかっていたら、もっと楽しかったかもしれないけれど、
キミのことを今より好きになってしまうかもしれなかったわけだから、分からなくてよかったのかも。
…ああだって、これ以上どうやって、好きになるっていうの?
仙人界にあがって、人間の言葉がわかるようになった。
キミの良く通る声が、ボクの鼓膜を響かせて、頭のなかに入って、意味を成して、理解できて、ああもうわかる…?
死ぬほどうれしかった。
キミは笑わない日が多くて、胸のなかの沢山の思いを、あまり言葉にはしてくれなくて、
相槌が精一杯のボクは、あまりキミの役には立たなかったかもしれないけれど、
キミが初めて心から笑ったあの瞬間は、キミ以上に笑顔になれた。
キミと過ごした五千年以上の時をボクは誇りに思う。
あの空の青さも、緑の深さも、血の赤さも、光の眩しさも、全部、全部、覚えてる。
キミの白金の髪も、意外と長いまつげも、大きな群青色の目も、ちょっと変な趣味も、寂しがりやなとこも全部、だいすき。
「――申公豹、」
隣を、歩くキミに。
その最強の冠を持つ者にしては、華奢すぎる白い手に。
今精一杯の感謝と
尊敬と
愛を込めて。
キスを。
ボクのたった一人の、御主人さまへ。
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手紙形式。
友情以上、恋愛未満。またはそれを凌駕するなにか。
10/10/10 …10がそろってる!(笑)
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