雑貨屋(と言って良いのかどうなのかは不明だが)で入手したドールサイズのお風呂にトプトプとお湯を注ぐ。
     熱すぎないのを確認したら、後はかわいいドールが入るのを待つばかりだ。


      楊ゼンくんの恋人。(お風呂編)


     「あ、あの…楊ゼン、そんなにじっと見ていなくても…勝手に入ってますから…」
     「そんなのダメですよ!もし溺れたりしたらどうするんです!」
     「いや、溺れませんって…」
     「とにかく普段とは勝手が違うんですから。あなたに何かあったら黒点虎にどやされてしまいます。」
     「で、でも…」


     そんなにじっと見られていると恥ずかしい、と幾分頬を染める申公豹の心境が分からないわけではない。
     誰だって風呂の現場をじっと見られるのは嫌だろうから。
     でも小さくなった申公豹にこのサイズのバスタブで問題ないのかどうかも分からないし、本当に溺れたら笑い事じゃ済まされない。
     この前だってコップのサイズが合わなくて中身をぶちまけてしまったし、机の端から落ちそうになったこともあるのだから。



     …というのは建前なんだろうなぁ。
     ポーカーフェイスを装っているけど、にやけるのを隠すのが大変だ。
     16センチの申公豹でなければ、彼のお風呂を堂々と、余すところなく見るなんてまず無理だ。
     だから、このチャンスは生かすべきであっても殺すべきではない。










     「お湯加減どうですか?」
     「…ちょうどいいですよ。…ありがとうございます。」
     「どういたしまして。」


     ちゃぷんと申公豹が手や脚を動かすたびに水音が跳ねる。
     毛先から水がこぼれるのも、肌が桜色に変わっていくのも実に見ていて飽きない。
     ただもう少しわがままを言えば、こっちを見て欲しいと言うことだろうか。
     彼は僕にずっと背を向けてお湯に浸かっているのだ。


     「申公豹、こっち向いてくださいよ。」
     「嫌です。…あなたがじっと見るから。」


     拗ねた様な声でそう返された。
     そうやってむくれる仕草がかわいいってことをまるでわかっていない。
     あと、自分が16センチに縮んでしまって、どれほど無力化しているのかということも。


     「でもいつまでもそこに居ては、体が洗えませんよ?」
     「ぅ…」


     僕の言うことを認めざるを得ないのか、悔しそうに申公豹が唸った。
     それは約20秒ほど続いて、彼の中で色々葛藤しているんだろうなぁということが見て取れた。
     諦めて体を洗うか、背を向けて湯に浸かり続けてのぼせるか。
     その選択を思案している途中で、申公豹は「あ」と声を上げた。


     「そういえば楊ゼン、体を洗うタオルが無いです。」
     「あ、そういえば用意してませんでしたね。」


     言われて気付いた僕は何かタオルを小さく切って、小さい彼に渡そうかと思考を巡らした。
     タオル、タオルタオル。
     いや、まてよ?これってすごいチャンスじゃないか。


     読者の皆さん、断っておきますけどこれは故意じゃない。
     本当にタオルのことなんて忘れていたんだ。
     …しかし、こうやって降ってきた幸運を棒に振るほど僕はバカじゃない。


     ごめんなさい申公豹。
     黒点虎に言いつけられていたけれど。
     所詮、理性と本能の天秤は本能が大きく傾くものでしょう?




     「洗ってあげますよ。」




     「は…?」
     「そのほうが、早いですよ、きっと。」


     にっこりと、僕はこれ以上ないってくらいに微笑んだ。


     「え、えっ?で、でもっ…」
     「ほら、早く早く。そんなにお湯の中にいたらのぼせますよ?申公豹。」


     ひょい、と小さな彼を湯船から掬い取って手の中で安定させる。
     こういうときに、16センチって便利だなぁ、なんて思う。…彼には絶対言えないけど。


     「ちょっと!?まだ良いなんて一言も…っ」
     「はいちょっと冷たいですからね。」


     そういって、ボディソープのポンプを申公豹の腹の上で一押しした。


     「ぅ…冷た…。」


     一糸纏わぬ白い肌に、とろっとしたボディソープが流れる。
     腹から脚の付け根まで伝って、内股に流れていくそれの冷たさに、申公豹は思わず顔を歪めた。
     それが情事の表情とダブって、僕の理性は音を立てて崩れた。


     「く、すぐったいですっ…」


     こうなったらもう止まらない。
     ゆっくりと申公豹の腹に指を滑らせる。
     面積が小さいのですぐに洗えてしまうけれど、それを時間をかけて丹念に泡立てていった。


     「ん…ぅ…」


     首を撫でるとくすぐったそうにすくめられるのも。
     わき腹を撫でるとひくひく肌が震えるのも。
     全部かわいくて見ていて飽きない。


     「あ、のっ…楊ゼン…?」


     さすがに僕の行動が「体を洗うため」だけのものではないと悟ったのか、申公豹が訝しげに声をかけた。
     僕はそれに気付かない振りをして、平然と返事をする。


     「なんですか?あ、どこか痒いところありました?」
     「え?いえ…違います、けど…」


     普段は見られない、おろおろ、といった形容詞がぴったりの申公豹に思わずにやける。
     だんだん楽しくなってきて、脚を洗っている指が滑った振りをして、彼の性器に触れた。



     「っひゃぁ…!」



     びくん、と小さな身体が手の中で跳ねた。
     予想通りの反応に思わず笑ってしまう。


     「ここも、洗わないとダメですよね?」
     「え?い、いいですっ…そこは…っ!」
     「遠慮しなくたって良いですよ。」
     「え、遠慮なんかしてませっ…ゃ、やぁっ…!?」


     そのまま指を滑らせていくと、申公豹の身体がびくびくと震えだす。


     「あっ…よぉぜ…も、もう良いですっ…からぁ…」
     「もうちょっと。」
     「ひっ…」


     何度も執拗に撫でていると、必死で僕を止めようと申公豹が立てた自分の両の太腿で、僕の指を一生懸命挟んだ上、
     両腕で突っぱねてくる。
     体格差というか身長差というか、16センチと1メートル強では勝負が目に見えている。
     敵わないことは重々承知なのだろうけれど、そこで引かないのが彼である。
     そういう所がこっちをより煽るのだが。


     「ふぁ、ぁ…おねが…も、やめ…っ…」
     「もう少しで終わりますから…」


     そういってにこりと僕は笑う。
     嘘をつけ!と申公豹の潤んだ群青の瞳が恨みがましそうに僕を見ていた。
     それも指を少し動かすだけで、今にも泣きそうな顔に変わる。


     「ぁっ…あ、ッ…や…嫌ぁ…」


     ふるふると申公豹の頭が揺れる。
     もう限界が近いのだろう。
     僕の指を必死に挟んでいる太腿も、震えている。


     「も、も…だめっ…放し…――あ、ゃ…あッ…!!」


     申公豹の身体が大きく震えて、僕の指先に生暖かい感触が広がった。


     「ぁ、ぅ…」


     とろとろと、精液と泡が混じって肌を伝い落ちていく。
     すっかり息の上がってしまった申公豹の、まだ甘さを含んだ声が響いた。




     「また汚れちゃいましたね?」
     「っ…だ、誰の所為だとッ…!」
     「僕の所為ですね。」


     射精の名残と、怒っているのとで顔を真っ赤にした申公豹がそう言うので、僕はさも当然というように返事をした。 
     そう、僕の所為だ。
     こうなるとわかっていてやったのだから。



     「僕の所為なので、責任を取ってもう一度洗わせていただきます。」   
     「……。」


     申公豹が絶句した。
     でも、理には適っているでしょう?僕の言っていること。






     その後、バスタイムが僕にとっては至福の時間、彼にとっては恐怖の時間になったことは言うまでもない。














     ――――――――――――――――――――――――――――――――
     楊ゼンが変態で申し訳ない。
     でも、管理人が変態なのでどうしようもありません。
     本当は色々突っ込むものを考えていたんですが(最低)
     貧相な頭では綿棒ぐらいしか思う浮かばず…
     どっちみち楊ゼンは後で自己処理するしかないよね、というかわいそうな話になりそうだったので
     前戯できりました。嘘です。本番苦手なだけです。申し訳ない!




     Back